七星

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『美しい』

美しいものを思い浮かべる時、真っ先に浮かんでくるのは色の事典である。色の名前と由来なんかが書いてある、分厚い本。

色の事典を片っ端から見ていくと、当たり前のようで実は知らなかったことを、たくさん知ることができる。勿忘草の由来となった悲しい物語の内容も、私はここで知った。

この世界を構成しているあらゆるものが、色を持っている。ということは、万物には必ず物語があるとも言えるのではないか。

今書いているこの文章の文字も、黒という色を持つ。そして黒は一色ではない。漆黒、墨色、濡羽色、その他にも慣用色名では言い表せない、様々な黒がある。そして、様々な黒はそれぞれに、違った物語を持っている。

同じ人なんていないから美しい、という考え方が、だから私は結構好きであり、共感もしている。

そもそも人間というものは、カラフルな生き物なのだ。皆が違う名前を持ち、その名前にも由来がある。生い立ちもそれぞれ違い、各々が他とは微妙に違った物語を背負って生きていく。時にはいくつもの物語が干渉し合いながら、大きな流れを作っていく。

無彩色だって、有彩色と同様、色であることに変わりはない。無色透明にしか喩えられない人生も、無色透明という色なのである。

だから人生を、そして人間を大切にしたい。どんなに汚れて見えても、それはその人が持つ色であり、物語なのだから。

今、私にはどうしても好きになれない人がいる。半年以上、ずっと我慢してきたけれど、未だに憎たらしいという気持ちが消えない。

彼女の持つ色を、紡いできた物語を、いつか私も受容できるようになるのだろうか。美しいと、言えるようになるのだろうか。

答えは、まだわからない。

1/16/2026, 11:54:39 AM