音の夢

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「おはよー」「はよ、飯できてるぞ。」「うぃ、顔洗ってくる。」
なんでもない日常。2人はルームシェアをして過ごしていた。
血は繋がってない。そもそもどこでどうやって出会ったかも忘れた。それぐらい長い仲だし、こうして共に過ごせる程度には深い仲だ。
「「いただきます」」
彼が作ってくれた朝食を頬張りながらふと出会いのことを思い出そうと逡巡する。一向に記憶の底から出てくることは無い。
「どうかしたか?」
どうやらずっとご飯にそっちのけで彼を見つめていたらしい。なんでもない、と誤魔化しながら再び食事に戻る。
とはいえ1度気になったものはなかなか頭から離れないもの。味を気にしないほど考え込んでしまい、気づいたらもう何も残ってない食器が目の前にあった。
「ごちそうさま」
まだ食べている彼を横目に食器を洗い場に流し、部屋に戻ってベッドに倒れ、考え込む。


最近よく見る夢がある。彼がよく分からない奴らを倒していく夢。しかも毎回場所や時代が変わっていく。それがやけにリアルで、最近は現実と区別がつかなくなってきた。それに彼も夜中外を出歩くようになったのが余計にそう感じさせてくる。実は眠っていなくて、実際に後をついて行って見た光景なのではと思ってしまう。

でも、それでも。彼のことは信用してるのでいつか話してくれることを祈って。いまは何でもないフリをしていよう。
きっと、まだ。その時じゃないだろうから。
『何でもないフリ』

12/12/2024, 7:35:37 AM