学校中がお祭り騒ぎになっている文化祭。
賑やかな廊下を通り抜け、教室のドアを開けた。
教室内には、荒井さんが窓際の席に座って、外を眺めている。
僕は荒井さんが座っている席へ、ゆっくり向かう。
距離が近くなると、荒井さんの良い匂いが鼻につく。
席に到着し、深呼吸をしてから、荒井さんに向かって言った。
「荒井さん!僕と一緒に……文化祭一緒に回って下さいっ!」
荒井さんはこっちを向き、僕を見ながら口を開く。
「大人しいあんたが、ギャルの私を誘うなんてやるじゃん」
「えっと……荒井さんも大人しいよね?口調はギャルだけど、見た目は控え目だし……」
「ちょ!そんなこと言うなし!」
荒井さんのことは前から気になっていた。
見た目は真面目そうな大人しい女の子なのに、口調は真逆だったから。
本人によると、自分を変えたくてギャル口調で話すようになったという。
でも、クラスの皆から変な目で見られるようになり、誰も荒井さんと話さなくなった。
そして文化祭の今日、荒井さんは一人で教室にいる。
だから僕は、勇気を出して、荒井さんを教室から連れ出そうと思った。
文化祭を一人で過ごさず、楽しんでほしかったから。
「えっと……ど、どうかな?僕と一緒に文化祭、回ってくれないかな?」
「……ふんっ、仕方ないわね。折角勇気を出して誘ってくれたのに、断ったら可哀想だから付き合ってあげるわっ」
口ではそう言っているが、荒井さんは嬉しそうな顔をしている。
「なにニヤニヤしてるのよ!行くわよっ!」
荒井さんは席を立ち、僕の手を引っ張って廊下へ向かう。
今日は、楽しい文化祭になりそうだ。
9/23/2025, 10:17:52 PM