庭の雑草を抜いていたら、玄関までの通り道に一輪、花が咲いていた。薄桃色の花弁の可憐な花だった。何の花だかはわからないけど、すごく可愛い。抜いちゃうのはもったいない。でも、思いっきり通り道に咲いてる。ここで抜かなくてもいつか蹴って折れて枯れてしまうかも。うーん、どうしよう。
しばらく考えて、うちにはこのくらいの花が生けられる一輪挿しがあったことを思い出した。亡くなった母がよくそのへんの綺麗な花や花屋さんで買ってきた鮮やかな花なんかを生けていた記憶がある。
私は一旦家の中に入り、食器棚の奥の奥を探った。その一輪挿しはすぐに見つかった。特に装飾もない地味な一輪挿しだ。
私はもう一度庭に戻って、例の花を思いきって手折った。それを、家の中で一輪挿しに生ける。サイズはピッタリ。リビングのテーブルの上に置けば、花の薄桃色に、部屋の雰囲気が少し柔らかくなったような気がする。特別大きな花でもないし、派手な花でもないのに、花には部屋の雰囲気を変える力があるらしい。
母が花を飾る気持ち、昔はあんまりわかってなかった。どうせなら花束を飾ればいいのにって思ってた。あの頃の私は、一輪の花の持つ力に気づけていなかったのね。
一輪挿しに、花。あの頃より少し、母の気持ちがわかる気がした。
2/25/2025, 12:37:52 AM