〜忘れたくても忘れられない〜
「おはよう」
そう言って隣で笑ってくれた君はもう居ない。
あの時助けられなかった。
僕は彼のことを突き放してしまった。
その日から続く《悪夢》が頭から離れない
朝起きてすぐ顔を洗う。
鏡を除く僕の顔は酷くなっていた。
夢の中で泣き崩れぐちゃぐちゃになった顔と寝不足で目の下にクマができていた。
あぁ…彼がいないと僕は…何にもできないのか
自分の無力さが憎らしく感じた。
席に座り朝ごはんを作る。
彼がよく朝ごはんを作ってくれていた。
自分の作る朝ごはんと違いよく出来ていて、すごく美味しかった。
あ…失敗した、焦がしちゃった…
すいません…はい、はい…明日は出勤しますので…申し訳ありません…はい
電話から聞こえる上司の怒鳴り声。
こんなに休暇を取れば確かにここまで怒り狂うのは仕方ないだろう。
でも、それでもこの傷は癒えない
どれだけ休んでも沢山仕事をして気を紛らわせても何も現状は変わらなかった。
僕の体はどんどん悪くなるだけだった。
う…ぐぅ…げほっ、ごふっ……
今日食べたはずの朝ごはん。
ほとんど消化されることなく吐き出された。
気持ち悪い…薬…2階にあったはず……
重い体を動かして、僕は2階へと重くなった足を運ぶ。
あれ……僕ここの窓いつ開けたんだ……!?
ふわりと香る懐かしい匂い。
懐かしくとても悲しい思い出がよみがえってくる。
「ほら、起きて、大丈夫かい?」
この声は……?
ふわりと頭を撫でられ、まぶたを閉じる。
暗闇の中に意識が放り込まれる
「ミヤ生きるんだよ」
僕はあの言葉を今でも忘れられない
10/17/2022, 11:31:12 AM