一匹の蜂が蜜を求めて飛んでいる。蜜蜂は小さく、他の虫たちにさえ存在をせせら笑われるほど気も弱かった。
だが、彼は仕事に対してとても真摯に向き合っていた。
誰も褒めてくれなくても、小さいからと指をさされるような毎日でも、ひたすらに蜜を運んだ。
ある日、とてもいい香りに出会った。
これは絶対にいい蜜があるに違いない。彼は羽をぶん、と大きく鳴らした。飛んで、飛んで、ひたすらに香りのする方へ全力を出した。
やがてたどり着いた場所には自分の体よりも大きな、とても大きな生き物がいた。誰かが呼んでいたが、こいつらはきっと「人間」という生き物だろう。
こわい、けど、蜜を集めなきゃ。
蜜蜂は雑踏を縫うように飛び回る。人間たちは大きさもバラバラだし、それぞれに色も違う。頭の形も違う、蜂とは大違いだ。
そんな人間たちの周りいくらを飛んでも蜂は密を見つけることができなかった。いや、花は確かにあったが、求めていた香りじゃない。
――探し当てるまで巣には帰らないと決意をする蜂は気づくことができないかもしれない。
人間の纏う様々な香りは時に、花よりも馨しいことに。
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テーマ「花畑」
9/17/2024, 1:27:29 PM