秀一と零

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【泣かないで】
零は、立ち尽くしていた。
本拠地であった建物が爆発と共に崩れ落ちていく。
長らくにも及ぶ組織との戦い。
そして今日この日、全てが終わった。
ボスを始めとした幹部らを取り押さえ、開発していた薬の重要データも手に入れた。これで小さな名探偵や、優れた研究者の少女は元に戻ることが出来るだろう。
彼女は戦い終えたのだ。
喜ぶべきなのだろう。
しかし、彼女の目からは涙が溢れて出た。
止めようとしても止まらない暖かな水滴は、差し出されたハンカチによって拭いさられた。
「泣かないでくれ。泣くときは俺の胸でと約束しただろう?」
涙を堪えきれず、しゃくり上げながらしがみついてきた彼女を、赤井はそっと抱き締めた。

12/1/2022, 5:21:17 AM