いぐあな

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300字小説

愛と平和の物語

 愛と平和の物語ねぇ。こんなのはどうだい?
 昔むかし、この辺りに美しい島があった。小さな島だったけど、海も土地も肥えて、洞穴ではアクアマリンの原石が豊富に採れた。住民は皆、平和に豊かに暮らしていた。しかし、その平和と豊かさにはカラクリがあった。それを維持し続けるには島のヌシに十年に一人生贄を捧げなければならなかったんだ。
 そして、ある年、生贄にされる娘には恋人がいた。恋人は愛の為にヌシに捧げる夜、娘を連れて島を脱出した。島はヌシの怒りに触れて一夜にして海の藻屑になったとさ。
 ん? 聞きたかった話と違う? それは悪かったねぇ。

 海風がオババの家に吹き込む。髪に着けたアクアマリンの飾りがしゃらんと音を立てた。

お題「愛と平和」

3/10/2024, 11:08:22 AM