シオン

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「できておりますわ」
 一日経って『星野加工店』にサルサとウィルが訪れれば、ミアはウインクと共にそう言った。サルサの手の上に置かれたのは少し大きめのキーホルダーだった。星のかけらと同じ色をしたプレートには文字が書かれていた。
「…………これは」
「お城に働いてますよ、っていう示しの物で、そうね、サルサくんのタイプならちょっとだけ『秘密』が隠れてるわ」
「…………秘密?」
 サルサが首を傾げると、ミアはウィルの方を見つめた。ウィルがゆっくりと瞬きをすれば、ミアは少しだけため息をつく。
「…………悪い子。貴方はサルサくんの教育係なんじゃないの?」
「……作った人が説明した方が分かりやすいものなんですよ、ミアさん」
「……まったくもう。理屈がちゃんと理解できてない、って言えばそれで終わるのに」
 もう一度ため息をついたミアはサルサの手をとった。
「これはね、他のみんなが使える『魔法のようなもの』が使えるようになる道具なの」
「……え?」
 サルサはキーホルダーをもう一度見つめた。店内の照明を反射するプレートは神秘的な輝きを纏っていて、ミアの言葉を真実らしい、と思わせるだけの力があった。
「…………どうやって」
「持ちながら、あるいはどこか身体に触れる状態にして、したいことを祈るだけ」
「なるほど」
 サルサはギュッとキーホルダーを握ろうとしたが、ミアが彼の手の甲を撫でた。
「ダメ。ここじゃだめなの。ここには星のかけらが多すぎるから、お店で使うと大変なことになっちゃうわ」
「わ、分かりました……」
 サルサが申し訳なさそうに呟くとミアは笑った。
「そんな顔しなくていいのよ。お城で試してみてちょうだいね」

 城下町から帰ってきたサルサはウィルから『試してみたくて仕方ないようですので、この後はオフにしましょうか』と言われたのも相まって嬉しそうな顔でスキップなんかをしながら部屋に戻ってきた。
 どんなことをやろうか、と気持ちを昂らせながらサルサは星のかけらを見つめた。
 物を、そして力を増やすことができるのならば、とサルサが新品のノートと共にキーホルダーに向かって祈れば、ノートは二つに増える。大きさやページ数なども全く変わっていなかった。
「本当に魔法みたい……」
 サルサはそう呟いた。
 キーホルダーの星のかけらは相変わらず光を反射していて、黄色ではなく、カラフルに見える。まるで、彼の手の中に宇宙がすっぽり入ってしまったかのような全能感を抱いたサルサは色んなものを増やしてみようと意気込んで、次の対象を選び始めたのだった。

1/19/2025, 4:09:41 AM