『時計の針』
午前零時の少し前、部屋の隅でカチリと重い音が響いた。
中古屋で安く買った柱時計だ。
秒針の動きが妙にぎこちない。
普通、針は円を描いて進むものだが、この時計の針は何かを必死に押し退けているように見える。
一秒ごとに、針が震える。
まるで目に見えない何かに食い込んでいるかのような抵抗感。
盤面を覗き込むと、短針と長針が重なる瞬間、かすかに何かが潰れるような湿った音が聞こえた。
よく見ると、文字盤の隙間から赤黒い細い糸のようなものが滲み出している。
それは針に絡みつき、進みを止めようと抗っていた。
針は、時を刻んでいるのではなかった。
文字盤の裏側に閉じ込められた何かを、鋭利な刃先で切り刻み続けているのだ。
静寂の中、私は魅入られたようにじっとソレを凝視していた。
2/7/2026, 9:18:36 AM