カーテン
はじめてのカーテンコールはよく覚えている。
もちろん拍手を贈る側だ。
はじめて観た観劇は劇団四季のミュージカル「ライオンキング」だった。
お金をためて社会人4年目に東京まで一人で観に行った。
もともとディズニーミュージカルが好きで、劇団四季のリトルマーメイドの動画をYouTubeで観て感銘を受けていた。
職場の同僚にその話をすると、ならばライオンキングを1度は観るべきだと熱く勧められた。
観劇に一万二千円、新幹線代や宿泊費も合わせると旅行代金になってしまう。
それでも未知なる感動を求めて休みをつくった。
自分だけの力で観たライオンキングは映画くらいしか知らない私に刺激的だった。
大人だけでない、平日の昼間に子供までもが役者として舞台に立っていた。
草の役まであった。風にそよぐ優雅な草だった。
一糸乱れぬ群舞だった。
田舎育ちの私には全く知らない世界だった。
カーテンコールで挨拶をする俳優さんたちの清々しい笑顔と長年の努力を滲ませる謙虚な佇まいは凡人の私には真似できない。
全く知らない人生を歩んできた俳優さんたちの一挙一投足をこの目に収めたくて、自然と席を立った。
拍手を続ければ、閉じたカーテンがまた上がる。
痛くなるほど手を打った。
まだ、観ていたい。
ありがとう!
あのカーテンコールは一生に1度だけ。
6/30/2025, 1:57:17 PM