ロッテテ

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プラスチックの宝石がついた指輪を朝日にかざして眺める。それが私のルーティンだ。他の人にはただの安っぽい子供のおもちゃにしか見えないだろう。だけど、この指輪は私の宝物なのだ。

きっとどんなにお金に困ったとしても、家の中の物を全て売り払ったとしても、この指輪だけは大事に手元に残すだろう。角度を変えればそれに合わせてキラキラ輝く宝物を眺めて昔を思い出す。

私が小学校5年生になった夏。彼は向日葵の黄色と一緒に私の家の隣へ越してきた。浅黒い肌に真っ白な歯を見せて笑う彼の顔が今でも脳裏に焼き付いて離れない。彼の活発な性格が、地元の男子との相性が良かったようで、毎日のようにサッカーに勤しんでした。

彼と対照的に、内向的な性格で友達も少なく、部屋で本を読んで過ごしている様な子供だった私がどうして彼と仲良くなれたのか。それは尊敬にも値する彼の性格に所以する。

運動が苦手だと何度も断ってるのに、他の友達と遊ぶことを何度も進めてるのに、いいからと手を引き一緒にキャッチボールをしてくれた。下手くそな私の投球も笑いながら取ろうとしてくれたし、私が取りやすいように柔らかくボールを投げてくれた。

雨の日はコンビニで買い込んだお菓子を持って私の部屋に上がり込んできた。遊ばないよ、そう言って1人本を読めば後ろから覗き込んで一緒に読んだりした。彼に本のあらすじや、面白いところを話すのは、まあ、少しは楽しかったかも。

ただ、5年生ともなればマセた男子がいつも一緒にいる私達をからかったりしてきた。私は男子にバカにされるのがすごく腹立たしく、その程度ほっとけばいいのに、ムキになって言い返してしまった。それも彼を侮辱するように。

その日から私はもう男子にからかわれない様、彼とは距離をとるようになった。一緒の登下校も、キャッチボールも、雨の日の読書も全て断った。そんなある日、確か夏の終わりを告げる冷たい風が吹くようになった頃だったろうか、赤い顔をして俯いた彼が玄関先にいた。

握りしめた手を私の前に突き出して、力を入れて目に溜まった涙を落とさないようにした彼は早口で言った。

「おれ、お前にやなことしたのか分かんなくて、でも、そうならごめん!反省するし、もうしないから、だから…」

そう言って私の手を取り、握っていたものを手のひらに押し付けて続けた。

「避けるのやめて!お前と、仲良くしたいんだ!!」

そう言って家に走り去っていった。手のひらを見れば、大分優しくなった夏日に照らされた美しい指輪が置かれていた。

4/2/2024, 2:16:02 PM