君は今、私の手を引き、「あの丘へ行こう」と言う。小さく、か細く、口遊むように続けられる取り止めもない話たちは、しかし決して弱くはなく、その丘までの確かな手引きとなっていく。小石ひとつ落ちていない侘しい道を歩いていく。あの丘、とやらがどういった様子なのか私には分からない。
私たちの十字架は、この脳髄にまで届きうるイバラの冠は。
「荊棘、と書く」
君は言う。
刑に処される、草の輪を頭に被る。
この脳髄にまで届く荊棘の冠は。
「この穴だらけの脳からこぼれる望みごと磔にしてくれる場所が、その丘?」
私の問いに君は笑って、わたしの荊棘の冠を持ち上げて、刺さった棘をひとつ抜き去って、その穴にキスを施す。
こんな小石も落ちていない道の先にある丘で、誰が私に石を投げつけてくれるというの。
2/26/2024, 9:39:30 PM