『二人ぼっち』
21時、二人で手を繋いで、公園の芝生に寝転がって、「二人だけの世界になれば良いのに」なんて叶うはずもない願い事を、この世界の何処かに存在する神とやらに願った。
暴力ばかりふる私の両親も、彼女に依存している彼女の母親も、クラスのいじめっ子も、見て見ぬふりをする先生も、みんなみんな居なくなれば良いのにと。
「ねえ、どうして神様はわたしたちの願いを叶えてくれないんだろう」
寂しそうな、苦しそうな声色でそう呟いた彼女の表情は暗くてよく見えなかったけれど、彼女の性格上、きっと笑っていただろう。
「分からない。もしかしたら神様なんて居ないのかもしれないね」
「そっか。やっぱり、やるしか、ないのかな」
「うん、でも、怖いや」
無意識に力が入っていたようで、彼女の手を握る力が強くなると、彼女も力強く握り返してくれた。
「怖いけど、もう自由になりたいよ」
彼女と出会ってから今までで一番苦しそうな声色で呟かれたその言葉に、酷く共感したのと同時に、もうこうするしかないという状況に胸が締め付けられた。
「そうだね。やろう」
私たちは起き上がって、近くの高層ビルへと歩みを進めると、何方ともなく笑いが起こった。
「せめて来世では幸せになれますように!」
二人で声を合わせ、大きな声でそう叫んで飛んだ瞬間、私たちは誰よりも自由だった。
3/21/2024, 10:50:46 AM