どぉーん、と、音はどこにも引っかからずに真っ直ぐ響いた。
月の無い夜だった。風もほとんど無くて、まとわりつく湿気がぺたぺたと肌にシャツの袖を引っ付けた。
真っ暗闇の中、手元をスマホのライトで照らしながら、見るからに安っぽい色のライターを握り締めていた。爪の先まで光っていた。
華奢な指先だと中々ライターが灯せなくて、「やろうか」「いいよ」と押し問答しながらどうにかこうにか。
しゅぽ、と軽い音を立てて導火線に火がついて、すぐさま背を向けて暗闇の中へ駆け出していく。距離をとる。
安っぽくて、ちゃちくって、おもちゃみたいで。花火大会のなんかとは比べ物にならないほどちっぽけな私たちの打ち上げ花火は、それでも二人分の財布を空っぽにするくらいの値段がした。
ぱっとたんぽぽくらいの小輪の花が咲いて、光って、真っ暗な海に散っていく。
ずっとずっと、訳も分からないくらいに楽しくて仕方が無くて、私たちはずーっと、けたたましく笑い声を咲かせていた。
8/15/2023, 7:19:52 PM