『エイプリルフール』、嘘をついても咎められない日と言っても人を傷付けたり大きな誤解を招くものは論外。くすりと笑えるような料理に使うスパイス程度の量に留めて、君になんて言おう?
だいたい嘘は何かを咄嗟に隠したり誤魔化したりする時に使うためわざわざ考えると思い付かない。君に対して嘘を付きたくないという心理も働いているのだろう。難しいな…。
「と言うわけで、今の俺は大きなイヌだ」
「えぇ?」
考えることを放棄したように君の膝に頭を乗せた。静かに沈んで柔らかいなと夢心地。「わん」なんて言いだした俺に目をまん丸にしている。
「癖っ毛だし犬種はなんだろう…?もふもふ具合はポメラニアンに似てるけどイメージと違うし雑種かなぁ?」
なんて真剣に悩んで俺の戯れに付き合ってくれる。君の細い陶器のような手に撫でられて、尻尾があればパタパタと振っているだろう。
「お腹を見せてくれるのは甘えてるんだっけ?」
頭から手が移動してお腹に触れる。あまりされることじゃないため変な気分だ。ソワソワすると言うかなんとも手つきが…。
耐えられなくなって君に覆い被さった。イヌのようにじゃれつくと擽ったいと笑って存外楽しそうで鼻先を触れさせて「わん!」と鳴いてみた。
「ふふっ、まだ遊びたいの?おいで大きなワンちゃん」
かわいい飼い主様のお許しが出たので楽しませてもらおうか。…まぁ、俺の設定はイヌ科の狼なんだけど。
舌舐りをして獲物を見る。タネ明かしをするのはその日のうちに、一通り遊んだ後だ。
4/2/2023, 6:14:36 AM