SUR (スール)

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 夜なのに満月があまりにも明るくて、まるで街灯のように人も街も照らしている。なんでも照らしてしまいそうだから、家のライトがついているのに満月の明るさでライトが負けてしまう。こんなふうに感じたのは久し振りかもしれない。自分のことで精一杯、周りを見る余裕なんてない、一生懸命に今を生きている。ただ、それだけだった。何をするにも億劫で、自分の今の状態は何パーセントで、一日を乗り切るのにどれだけの力を使わなければならないのか、その繰り返しだった。
 月日が経ち、少しずつ自分のことに目を向けられるようになってきた。周りを見る余裕も出てきた。何がきっかけかは自分でも分からない。それでいい。自分のことを深く掘り下げるのは好きじゃない。今は不思議な気持ちでただ一人、この夜の空間を楽しんでいる。

6/11/2025, 1:38:40 AM