狐コンコン(フィクション小説)

Open App

10

私の背中を押す人を見た事はない

ただ、押された記憶だけは確かにある

ブランコに腰を下ろして、頭を俯かせると

どこからともなく、風が吹いたのか

背中に力を感じるのだ

もっと強くとねだると、力は更に強くなる

だけど、どうしてだろう。

私はいつからブランコに乗っていたのか、思い出せない。

私はどれくらい、ブランコを漕いでいるの?







「母さん、そろそろ帰ろうか。今夜は父さんが作ったシチューがあるよ。」

「なぁに、やめて、私はあなたのお母さんじゃない。ちゃんと名前があるの。紀美よ。みんなからは、きぃちゃんと呼ばれてるの。」

「あぁ、ごめんね、きぃちゃん。僕のお父さんがね、ご飯を用意しておうちで待ってるんだ。ほら、いつもブランコ、押してくれている人だよ。」

「そうなの?」

「今日は僕が押していたけれどね、いつもはお父さんが押しているんだ。優しい人だよ、きぃちゃんにも会ってほしいなぁ。ねぇ、父さんのご飯食べに行かないかい?」







私は少し考えたあと、背の高いお兄さんと手を繋いでお家にお邪魔する事にした。

だって、お腹が空いたんだもの。

それに早く帰らないと、あの人がお腹を空かせているだろうから。

私の愛しい人。

ふふ、早く美味しいご飯を作ってあげないと。






あら、あの人って、誰だったかしら。

2/1/2026, 10:15:08 AM