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私の背中を押す人を見た事はない
ただ、押された記憶だけは確かにある
ブランコに腰を下ろして、頭を俯かせると
どこからともなく、風が吹いたのか
背中に力を感じるのだ
もっと強くとねだると、力は更に強くなる
だけど、どうしてだろう。
私はいつからブランコに乗っていたのか、思い出せない。
私はどれくらい、ブランコを漕いでいるの?
「母さん、そろそろ帰ろうか。今夜は父さんが作ったシチューがあるよ。」
「なぁに、やめて、私はあなたのお母さんじゃない。ちゃんと名前があるの。紀美よ。みんなからは、きぃちゃんと呼ばれてるの。」
「あぁ、ごめんね、きぃちゃん。僕のお父さんがね、ご飯を用意しておうちで待ってるんだ。ほら、いつもブランコ、押してくれている人だよ。」
「そうなの?」
「今日は僕が押していたけれどね、いつもはお父さんが押しているんだ。優しい人だよ、きぃちゃんにも会ってほしいなぁ。ねぇ、父さんのご飯食べに行かないかい?」
私は少し考えたあと、背の高いお兄さんと手を繋いでお家にお邪魔する事にした。
だって、お腹が空いたんだもの。
それに早く帰らないと、あの人がお腹を空かせているだろうから。
私の愛しい人。
ふふ、早く美味しいご飯を作ってあげないと。
あら、あの人って、誰だったかしら。
2/1/2026, 10:15:08 AM