つちのこへび

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怒りが頭を貫く勢いで腹から湧いてきた。

5分前行動などと学生の時はよく言われた。

私は時間にルーズでよく遅刻を繰り返し、
さまざまな人々の反応を見てきた。

しわくちゃの顔で怒鳴られたり、
飽きれた顔で笑われたり、
予定が無かったことになる事もあった。

そのため、人の時間のルーズさにもそこまで気にするような事はなかった。むしろ自分と同じような時間感覚の持ち主に共感し、喜びさえした。

大人と呼ばれるような年頃になれば、そんな時間感覚でいれないような機会も増えてきた。
人に怒られるような怠惰な遅刻などは徐々に減っていった。特に仕事に関する遅刻はまだしたことが無い。

そんなある日、あいつは遅れてやってきた。

私が机に広げた資料あたりに目線をやりながら、馬鹿でかい体を椅子にガチャガチャと音をたてながら収める。

「おつかれー」

仕事上でしかこいつには関わりがないが、今日は会議での作戦を練るべく集まる運びになった。

私は先に述べたように時間に関してあまり気にするタイプではない。もちろん今回の事は大して気に留めないつもりだった。
だが、私の感情は今あいつへの怒りがその大半を占めていた。

以前、同期数人で集まった飲み会での会話がよぎる。
「遅刻はしたくはないけど、しちゃうような時はあるんだよなぁ…」
と肩を落とす同期に言葉を投げかけると、あいつは
「社会人にもなってありえない。遅刻なんて普通にしないだろ。」
とピシャリと線を引いた。

時間に厳しい人間の言葉は正論であるが故、自分の感覚とは明らかにかけ離れていることを感じつつも言い返すことはなかった。

そんなあいつが時間に遅れてきたのだ。その事実もさることながらにその態度。まるで時間に遅れてきたのは無かったことのように振る舞っている。

やはり私はこいつが嫌いだ。

8/4/2024, 9:49:44 PM