握り合わせた手に力がこもる。
今日はとても辛いことがあった。
傷付くのが悪いと。お前の苦しみなど大したことではないと。
誰かを悪く言うのは嫌だった。
だけど悲しかったと言えば、その程度でと笑われる。
「逃げればいい」
私は息を呑んで彼を見上げる。
私達は異質だ。私以上に彼が傷付いている。知っていたのに、なんて無様なの。
「戦いなんてなぁバカがやってればいいんだよ…」
ぐっと近づいて、肌と肌が触れあう。
「ま。ちょっと昔はオレも戦いばっかりのバカだったけどな…」
何が彼をそうさせたのだろうか。
じっと見てくる瞳に、私が映っていた。
11/7/2023, 8:01:30 PM