私達は双子の兄妹。双子なのに似てないねってよく言われるけれど、それはそうだと思う。
私は勉強も運動も、才能すら何もかも兄の下だから。
兄は常に学年一位の成績で、バスケ部に入っている。趣味でギターも弾けて、歌もうまい。顔立ちも整っているからすごく女子に人気だ。
一方の私は成績は中の下、運動が苦手でいつも絵ばかり描いていた。それも評価される程でもなく、クラス内ではいつも隅っこで本を読んでるか絵を描いてるかの、漫画で言うタダのモブ。
そんな両親は幼い頃から秀でた兄を蝶よ花よと育てていた。そんな姿を見ていたから、私には何も期待していないのは分かっていたため、今もこうして自由に生きている。
誰も見向きはしない、近づいてくる人もいるけれどその大半が兄が目的だ。
私と仲良くなって兄とお近づきになろうって魂胆で。
⸺私はなんで生まれてきたんだろう。
いつしかそれが口癖になっていた。兄を横目に自分が幽霊のような扱いを受けることが嫌になり始めて、自傷行為に走ったりなんかして。
でもそんな私を兄は見ていてくれた。私が傷ついたら助けてくれたり、死ぬな生きろと喝を入れてきたり、勉強も運動も全部教えてくれる。
だからもう少しだけ生きてもいいかな、なんて安直な事考えていよう。
本当はドジで馬鹿な引き立て役の私がいなくなるのが嫌なだけでしょ。
そうだよね? お兄ちゃん。
25.『蝶よ花よ』
8/8/2023, 11:15:22 AM