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家に隕石がある。

こう書くと、なんだか壮大な物語が始まりそうだが、今回はそんな壮大な物語を書くつもりはない。
ただ、以前購入した隕石の事をつらつらと書いてみようかと思ったまで、悪しからず。

件の隕石は、つくばエキスポセンターにて購入したお土産品だ。
科学館等にありがちな標本系の商品で、白いルースケースに入った隕石と隕石情報が書かれている厚紙が同梱されている。

隕石情報の厚紙には「隕石 ミニミニ」と表記されているが、商品裏のバーコードには「いん石 ミニミニ」となっている。表記ブレブレの緩さが、非常に微笑ましい。

隕石ミニミニ(こちらの方が読みやすいのでこちらの表記を採用)は、1576年アルゼンチンにて発見されたカンポ・デル・シエロ隕石の一部。
種類は、鉄質隕石でシリケート(ケイ酸塩)を含む粗いオクタヘドライト──参照:同梱の隕石情報

小指の爪を一回り小さくしたサイズだが、燻銀の重厚感ある色をしている。表面には段々とした彫りが刻まれており、まるで鳥の片翼の様に見える。

カンポ・デル・シエロ隕石は、総重量37,000kgもあったらしいので、自分が持っているのはクズと呼ばれる類のものだろう。それでも、表面に刻まれた翼の模様は、何にも代えがたい価値を内包しているように感じてならない。

ロマンチスト上等で言わせてもらえば、これは、星空の中を旅してきた、星の鳥だ。

果てしない宇宙を旅している最中、なんの因果あってか地球のアルゼンチンに墜落。それから393年間、土の中で眠っていたところ、人に発見される。それから更に時を重ねた、2024年。日本のつくばにてお土産品となっているところを私に発見された。

遥か遠く星空を旅し、地球上でも旅してきた翼が、白いルースケースの中で羽を休めている。

人では到底なし得ない長い長い旅をし、寿命が尽きて土に還るまで、長い長い時を地球と共に過ごすのだろう。

共にいられる時間は明らかに私の方が短いが、それまでの間ルースケースの中でその羽を休めてくれたら幸いである。

物言わぬ翼は今日も、鈍い輝きに銀河の片鱗を写している。
意味深長なその輝きに魅入られる一方で、宇宙の一部が手元にあるおかしみを、家にある隕石を見る度に味わっている。

7/5/2024, 2:55:06 PM