朝起きると、夢の詳細は覚えていない。
ただ、随分昔に好きだった人がでてきて、とても甘いひとときを過ごしたような気がする。
ちょっと切ないような気持ちになって、私はニヒルに口を歪めて起きる。
まだ余韻に浸りながら顔を洗い、鏡を見ると、なんだか違和感を感じる。眉をしかめて、よーく見る……眉に…眉毛に…白髪が混じっている…!
震える手をなだめ、毛抜きを取り、慎重にその一本を抜き取る。たしかに真っ白だ。それでいて眉毛だ。
まじまじとその一本を見つめながら、もうこれは記念に取っておいてもいいんじゃないかとさえ思えてくる。そんな考えを振り払い、潔くその一本とおさらばし、深く息を吐き、そして吸う。
あぁ、私は気づいているのだ。自分が直面する本当の現実に、気づいているのだ。
『夢と現実』
12/5/2022, 8:09:58 AM