1年後
宇宙戦艦ヤマトのプラモデルに2つの瓶を取り付ける。
右舷の瓶には夢や希望、僕の好きな歌を入れて。
左舷の瓶には不安と不満、心底にこびりついている呪いの言葉を吐いて詰め込む。
大精霊から授かった魔法の力で、僕はヤマトに生命を吹き込む。
台座を離れゆっくりと飛び立つ。推進力の赤い火を放ちながら、空を破り宇宙へ。
魔法は1年だ。1年かけて宇宙を巡り元のテーブルへ戻って来る。
2つの瓶は、1年後にはどうなっているのだろう。
蓋はしてある。逃げ出すことはないだろう。でも、宇宙の温度や放射線の影響を受けて何らかの変化があるかもしれない。
何よりも地球の重力を離れたことが大きい。世界の俗識から解放された僕の純粋な思いは、1年経ってもそのままなのか、あるいは霧散しているのか。
1年後が楽しみだ。
とは言ったが、本当は僕は魔法が使えない。だから、目の前の宇宙戦艦ヤマトを実際に宇宙へ上げることはできない。
仕方ない。本当の宇宙は無理だから、自分の心の中の宇宙へ飛ばそう。もちろん2つの瓶を添えて。
これはこれで1年後が楽しみだ。
5/8/2024, 9:44:55 PM