週末に山登りに行こうとあなたと約束したその日に、私は交通事故に遭って脚を骨折した。なんてタイミング。ツイてなさすぎ。あなたは、私が無事であったことをすごく喜んでくれて、それは嬉しかったけど、約束を守れなくなったことに私はすごく申し訳なくて、めちゃくちゃに落ち込んだ。
私が「ごめんね」と謝ると、あなたは「気にしないでいいんだよ。今は無理でも、頑張って治せば一緒に行けるじゃないか」と言ってくれた。
そこで、私は決意した。リハビリ頑張って、早く歩けるようになって、あなたと登山に行くんだ、って。
リハビリの始めはつらかった。うまくいかないことばかりで、痛いこともあった。本当にここからまたうまいこと歩けるようになるのか?って焦る気持ちばっかりで、それを何とかかんとか落ち着けながら、地道に頑張った。
あなたはリハビリに付き合ってくれようとしたけれど、悔しさや痛みに顔を歪める姿なんて見られたくなかったし、自力で立って歩けるようになるまでは会いたくなかったから、断った。
それから時は経ち、やっと、杖もなく脚を引きずらずにまっすぐ立って歩けるようになった。
私は、2人でよく散歩していた公園にあなたを呼んだ。私は、ベンチに座ってあなたを待った。
「久しぶり!」と明るく手を振りながらあなたがやってきた。私は数メートル先のあなたへ手のひらを向けて待ったをかけ、その場で立ち止まってもらう。あなたは少し怪訝な表情で立ち止まった。しかし、その表情は、私がベンチからすっくと立ち上がった姿を見て、驚きの表情に変わる。
私は、あなたを見つめて、あなたのもとへ、一歩一歩きちんと踏みしめ、確かな足取りで向かっていく。こうして歩く姿をあなたに見せるのは久しぶりだから、すごく緊張した。
あなたは、両の拳を握りしめて、固唾を呑んで見守ってくれているようだった。
数メートルの道のりを終え、あなたの目の前に立つ。あなたは少し涙ぐんでいた。
「リハビリ、頑張ったんだね。感動しちゃった」
あなたが言う。その表情は泣き笑いだ。まったく、大げさなんだから。
「うん、頑張った。まだ山登りは無理だけど、もっとトレーニングしたらできるようになるよ。その時は一緒に行ってね」
私はそう言いながら、一歩前へ出て、あなたの首に抱きついた。
あなたは優しく抱きとめて、労うように背中を撫でてくれた。
1/16/2025, 7:18:59 AM