Open App

月は見ている(テーマ 誰よりも、ずっと)


 夜の空に浮かぶ月は、世界中でたくさんの人が見ている。
 つらい人も、泣きそうな人も、孤独な人も。
 楽しい人も、幸せな人も、恋人たちも。

 人だけでなく、動物も。

 月から見ると、数えきれないほど多くの人、動物が、自分を見つめてきた。
 昔から、ずっと。

 誰よりも多くの生き物が、億年というスパンで、月を見続けてきた。

 これからも、月が地球から離れていく遠い未来のその日まで、多くの生き物が月を見ていくだろう。

 あくせく働き、過労死したりメンタルをやられたりする私たちも、勉強が嫌で仕方がない子どもも、一定以上の視力を持つ生き物たちも。

 願いを掛けた者もたくさんいた。

 恨み、にらみつけた人もいた。

 単に眺めた人ももちろんたくさんいた。

 誰よりも多くの生き物から、月は見られ続けている。

 月にもし意思があったなら、『すぐに寿命が来る割に、よくこちらを見上げてくる人間という生き物は、なんでこっちを見ているのか』と疑問に思うかもしれない。

 忙しい私たちや、生存競争でしのぎを削る生き物たちとは大きく離れた別世界で、月はただ、たたずんでいる。

4/9/2024, 9:18:27 PM