細い路地に入っていく連れに、相棒を伴い慌ててついていく。
いいものがありそうな気がする、らしいがこんなところに?と疑問しかない。
連れが期待しているのは世間的に価値のある、キラキラした、ものだろうに、こんななんの変哲もない入り組んだ路地道に隠されてるとは到底思えない。
それでも自身の勘に絶対的な確信を持ってか、いくばくかの冒険心か知らないがずんずんと進んでいく。
猫の尾が消えた建物の影、壁の低い位置に描かれた落書き、蓋の外れた側溝、入り組んでいることと、ひとつひとつ辿っていたことでそれほど距離はないはずだが時間をかけてたどり着いた。
連れが期待していたような特別な何か、は見当たらないただの袋小路だった。
まぁそんなものかと肩をすくめた背後で、目を奪われた。
濃色、藍紫、若紫、色合いはさまざまに咲き誇るのは朝顔だ。どこかから種が落ちたのか野生化しているらしく、添木も何もないが塀をつたい、伸びやかに花をつけている。
晴れた空気の中で天を見上げる朝顔の様相は心躍るものがあった。
少し花柄を失敬して布地を染めるのも良いかもしれない。ハンカチでも作れば、この鮮やかな路地のことを思い出せる。
自分の様子に喜んでいることを感じたのか、連れも悪くないか、と路地を眺めている。
連れにではなく、自分にいいものはあったねと相棒を軽く撫でた。
7/4/2024, 3:44:52 AM