いつもの帰り道、いつもの電車
そんな何気ない日常
だか、日常の裏には非日常が潜んでいる
ガタンゴトンと電車に揺られいつものように帰路に着く
ガタンゴトンと揺れる電車は心地よいが、他人の事が気になる。
だから、いつも通りヘッドホンを着け好きな音楽を流す。
外界と少しだけ隔絶され、他者との交流を少しだけ切り離す。
角の席に座り、カバンを抱き枕にし少しの休息をとる
これが僕の日常でありひと時の心の安らぎなのだ
家は心地よくない、だからこそ擬似的にでも1人になれる今が尊いのだ
習慣とは体が覚えている
どんなに疲れていようと、いつも通り最寄りの駅で目が覚める
だが、ここはどこだ?
電車の中というのは間違いない
いつもの角の席、いつもの白い内装と広告
それに、僕はまだ電車を降りていないのだ
ありえない事に、僕以外人がいない......
寂れた街ではあるが、通勤通学ラッシュというものはある
そして僕の家の最寄りは、それなりに利用人数があるはず
なのに、人が誰も載っていない
終点に着いたなら、車掌が起こすのだから。
寝過ごしていないし、車掌にバレることなく車庫に来た訳でもない......なんだこれは......
コツン、コツンと遠い足音が聞こえる
人の足音だ、僕以外にこの電車に誰か居たんだ
音の方へ顔を向けると、黒い人影がみえた。
遠目に見て大きい。実際に合えば190cmはある様に感じるそれを見た。
影はだんだんと近くなってくる
予想通り大きく、恰幅も良さそうな人
ただ、黒いシルエットしか分からないが
とりあえず、何があったか尋ねてみようと決心し
そのまま席に座り続けたコツン、コツンと近くなる足音
だが急に足音が止まる
「............」
え?!声が出ない??なんでだ?
驚きと共に思考をめぐらす。ふと、違和感に気がつく......いつの間にか、ヘッドホンから流れる音楽は止まっていた
違う!音がそもそも無くなってる......なんで?
影が気がついたら後ろから伸びている
振り返るとそこには、真っ黒い人のような影
顔があるはずのそこには、切り裂かれたかのように大きな口がニタニタと笑っている
そして、あるはずの目や鼻、眉髪さえもない
一瞬でやばさのわかるそれがいた
口をニチャアと開ける。大きな赤い舌と虚空のような世界が口の中にあった
咄嗟に僕は走り出した
なんだよあれ!なんなんだよぉおおおお!
音がないのも、こんなところにいるのも全部いつが
なにかしたのか?
やばい、やばい、やばい、やばい!!!!
逃げなきゃ、今は逃げなきゃ
一目散に、電車内を走り抜ける
連結部分の扉を開けて次の車両、また次の車両
3台ほど走り抜けたとき
心臓の音がドクン、ドクン、ドクン、ドクンと煩く警鐘を鳴らす
「はぁ......はぁ、あ?声が音がでる............」
逃げれたんだ
10/2/2025, 12:37:47 PM