未知亜

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 もう会わないつもりでいると思ったのに、ある日君に呼び出された。 自販機のボタンから「あたたかい」が消える頃だった。
 ゴトゴト音を立てた機械の前にしゃがみ込んで、君は二本まとめて缶を取り出す。一本ずつ取らなきゃいけないんだよ、と私はもう言わなかった。
 差し出されたミルクティとカフェオレ。ほんのしばらく迷ってから、私はミルクティを選んだ。君は僅かに眉を寄せて、チラリと地面に目を落とした。

 知ってるよ。君が目線を落とすのは何か不満がある時だ。左の方を見るのは噓を吐こうとしてる時、右は記憶を手繰り寄せている時。
 けれどこの直後、君は黙って私を見つめた。今までに一度もなかった。心の奥まで見られる気がして、缶を開ける振りで私が目を伏せた。


『My Heart』『見つめられると』

3/29/2026, 9:57:11 AM