300字小説
冬晴れの奇跡
冬晴れの太陽の下、小学校の校庭に子供の影だけが現れる。
一人、二人、三人……。飛び跳ねる、たくさんの影は大きさも服装も様々で、何からの事情で学校を卒業出来なかった子供達の影だという。
からっ風の中、聞こえない歓声が上がった。
昼下がりの住宅街を焼き芋屋のトラックが走る。一つ買い求め、焼き芋を影に向かって差し出す。たくさんの影の手が伸び、それぞれが影の芋を持って、好きな場所に散らばり仲良く食べ始める。
そのうちの一つ、見覚えのある帽子を被った男の子が俺の影に並んだ。俺が四年生のとき、都会の病院に入院して帰って来なかったアイツの影か。
「良い天気だな」
鉄棒に寄り掛かる。俺達はあの頃のように焼き芋を頬張った。
お題「太陽の下で」
11/25/2023, 12:01:10 PM