ただ一人。
部屋と呼ぶのが正しいのかもわからない、
真っ白な壁が四方八方にあることだけわかっている。
こちらから外へ声をかけても何の返答もない。
こちらを監視している様子もない。
本当に何もない箱に気が滅入りそうになる。
そういえば、お腹も減らないし喉も渇かない。
随分と長い時間ここにいる気がしているけど、
退屈すぎて時の流れを遅く感じているのかもしれない。
とはいえ、トイレに行きたいとか暑い寒いとかもないのはちょっと違和感を覚える。
あれ、いつからここにいるんだっけ。
なんで一人なんだっけ。
目の奥がチカっと痛み、とある1シーンが頭をよぎる。
通常の何倍も早いスピードで蛇行する大型車が
歩道へ突っ込んでくる。
私は前にいた知らない人を突き飛ばした。
気がついたら暴走した大型車は私の目の前にあり全身に痛みが走った。
知らない人を助けようとしたわけではない。
自分が助かるために道を作ろうとしただけ。
だけど自分は助からなくて、実質知らない人を守ったことになったみたいだ。
そうか、ここは。
どこかわかった気がした途端に、聞き覚えのある泣き声が耳を劈いた。
【声が聞こえる】2024/09/23
9/22/2024, 3:40:42 PM