山百合

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・10『相合傘』

スキュラは水掻きのようなものが付いている自分の手を見て悲鳴を上げた。この海は毒だ。早くここから離れなければ。
陸に逃げようと心では思っているのに足は勝手に海に向かっていた。
淵に入り腰まで海水に浸かった時
犬の鳴き声が聴こえた。一匹じゃない、何匹もいる!

犬はスキュラの腰あたりでせわしなく『犬かき』していた。
10頭かそれ以上か。
スキュラの足に生えたビラビラは海水で黒い犬になっていた。足から犬に成り代わっていた。
スキュラ自身の下半身の感覚が無い。

犬達が勝手にスキュラを海へ海へと誘ってゆく。
その時大きな波が来た。高波に飲まれて死ぬと思った時
頭上に無数のあじさいの花が現れた。
スキュラを完全に覆い尽くすほどのあじさいが傘となりドーム型のシェルターになった。あじさいの傘が波を弾いてゆく。

グラウだわ。
姿が見えないけど近くにいる。

【続く】

6/19/2024, 1:16:34 PM