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【星座】

「星ってさ、綺麗じゃん」

「うん」

ふと、思い出したかのように、彼はぽつりと言葉を零した。
相槌を返して、続きを待つ。
ずっと遠くで輝いている煌めきは、手を伸ばしても届きそうに無かった。
なんとなく上に伸ばした手が、空を切って下に落ちる。

「俺、星になってみたいんだよね」

「そうなんだ」

辺りは人工の明かりひとつなく、暗闇に包まれている。
風に吹かれて擦れ合っている草の音と鈴虫の声が控えめに満ちていた。

「嫌だったら全然いいんだけどさ、お前と一緒だったら嬉しいなって思ってるんだよ。だからさ、もしよかったら…」
「いいよ」

最後まで聞くこと無く、私は返事を返した。
先程よりも少し早口で言葉を紡いでいた口が閉じられる。
ちらりと横目でどんな顔をしているかを確認すると、案の定何か変なものでも食べたかの表情をしていた。

「顔、変になってるよ」
「いや…お前それで良いのかよ」

良いから「いいよ」と言ったというのに、何を戸惑っているのか。
その事を伝えると、諦めたかのように彼は手を広げて後ろに寝転がった。
背の高い草がクッションのように彼の体を包み込む。
まるで隠されているかのように、あっという間に体が見えなくなった。

「明日、満月らしいからその日にするか?」
「新月のほうが好き」
「新月? ま、それでもいいか」

明日もここで集まって満月見ようぜ、と彼が言った。
その言葉に無言で返す。
長い付き合いだ。無言が肯定なことなんてとっくの昔に知っているはず。

沈黙で満ちた場には、連なる星星がただ輝いていた。

10/5/2023, 2:55:22 PM