放置された傘は考える
わたしはきっと誰かの役に立つだろう
数日後、放置された傘の横に新たな傘がひとつ加わった
やあ
こんにちは
傘は話し相手ができて嬉しかった
傘は朝も昼も夜も、ずっと話し続けた
相手の傘も楽しんでいた
お互い孤独を忘れて、朝も昼も夜も、日が昇る日さえも好きになった
ある日、雨が降った
傘をもたない一人の大人が雨宿りに現れ、傘たちを見た
傘を一本、そこから抜いた
大人は傘をさしてその場をあとにした
あっという間の出来事だった
残された傘は、生まれてはじめて雨を憎んだ
誰かのためになるならば
傘はもう、素直に笑うことができなかった
7/26/2024, 12:12:41 PM