佐々宝砂

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冬の足音

直(じき)に初雪であろうが今夜は良く晴れて居る。夜の散歩と洒落こもうと街の通りを歩く。街灯があるので存外暗くない。街を外れて土手を歩くと流石に月明かりだけだ。と、びしゃ、びしゃ、びしゃと、聞き慣れぬ音が背後から聞こゆ。嗚呼、びしゃが附いた。文久生まれの祖母はびしゃに遭ったら逃げるなと云うた。黙って立ってびしゃを気にしない風で遣り過ごせと。びしゃ。びしゃ。音が近附いて来る。

12/3/2025, 10:26:57 PM