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コンクリートの道端に燕が翼を広げて倒れていた。様子を見るに死に垂んとするさまだった。彼は凝然とそれを見るばかりで、応急処置をしようとか、助けを呼ぼうとかそういう素振りは一切見せなかった。私たちは、憐れだな、と互いに共感を口にしてそのままその場から去った。彼の恬然とした顔つきはもはや見る影なく、親友の彼女と姦通した直後の男のような懺悔の面持ちで歩みを進めていた。ある程度の距離になっても、表情が懐柔することはなかった。ここに義侠心の敗北を見た気がする。

1/27/2024, 1:38:31 PM