「ただいまー、…ん?なにしてるの?」
「あ、おかえり。夕飯作ってみてるんだ。なにもしないのはさすがに申し訳ないし…」
なるべく急いで帰ってきたのであろう晴仁に、ふわりと笑みが漏れる。ほら俺のためにこんなにも必死になってくれる。
晴仁は俺の世界で唯一の、そしてかけがえのない輝き。
「そんなことしなくていいのに。菜月は俺に捕まってればいいんだってば。でもありがとう」
「んふふ」
後ろからぎゅっと痛いくらいに抱きしめられて、滲んだ笑みが零れる。
うれしい。
あったかい。
ひつようとされてる。
「…ごめんな」
「……んーん」
とたんに消えるように震えた晴仁の声に、さらとちいさく首を振る。
外の空気で冷えた晴仁の頬に擦り寄る。
謝らなくていいって言ってるのに。
「…晴仁がいなかったら俺いまいないよ」
躊躇う晴仁にこてんと頭を預ける。
晴仁のなかでは結論出てるくせに。現にこうして俺を捕まえてるじゃないか。そういうとこだよ、ほんと。
「菜月はこれでしあわせ?」
「うん、しあわせ」
「…ん、俺も」
黒く堕ちた瞳に、歪んで滲んだ笑み。
世界の端っこの、ふたりだけのせかい。
滲んだ笑みを返しては、唇をどちらともなく触れ合わせた。
地獄から連れ出してくれてありがと。
輝き #184
(“警察は失踪事件として調査を進めています”)
2/17/2025, 1:02:45 PM