虚書/Kyokaki

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【テーマ:神様だけが知っている】

 彼の秘密は神様しか知らなかった。
 彼は普通の男子高校生だった。私の同級生だった。クラスメイトだった。
 特筆すべきところはなく、まさに平凡。微妙に影が薄く、言われなければ居ないのも気づかなかった。
 それほどまでに、印象が残らない人物だった。

 彼と初めて深く関わりを持ったのは丁度一年程前だろうか。
「じゃ、罰ゲームで──に告るってことで!」
 そうして罰ゲームとして彼に告白した。初めはどうとも思ってなかったのだ。しかしそのまま話していく内に、彼の笑顔や、優しさ、そんなものに触れていき本当に惹かれてしまった。
 きっかけとなった罰ゲームを賭けていた友人にそれを告げると驚きはしたものの応援してくれた。流石叶、私の友人だ。

 彼と何回もデートをした。近くのショッピングモールで洋服を買ったり、ゲーセンでぬいぐるみを取ってくれたり…本当に優しかった。本当に嬉しかった。…本当に。彼は信じていなかったようだけど。
「結愛ちゃん、おいで。」
 今日はここらへんでは有名な神社…というより、ここの地域の人は大体ここで参拝するのだ。まあ、そこへと散歩をする。長い階段の先に石造りの無機質な鳥居、そこから石畳を辿ったの向こうには木でできた社がある。つまり一般的な神社だ。
 社に寄ると、白い蛇が彼の腕に巻き付いた。確か白い蛇は神の使いじゃ…
「結愛ちゃん、ありがとう。ここまでのこのこ来てくれて。」
「え?」
瞬間、社から大きな影が覆い被さった。

「あはっ、本当に大好きだよ。バカで、ノロマな君が。」
 社の奥で咀嚼する下僕を撫でながら言う。嗚呼、本当に愛らしい。これだから人間と関わりを持つのは辞められない。
「次は誰と遊ぼうか。くく、楽しみで仕方がないよ。」

「結愛は本当に良い子で、悩みはなさそうに見えました。だからまさか失踪するなんて…え、特に親しい人?うーん…一番仲がよかったのは多分私だと思いますけどね。ここ一年くらい何回も一緒に近くのショッピングモールで遊んでますから。」

7/4/2023, 5:47:06 PM