ミヤ

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貴女はいつも冷たい手をして、カイロがわりだと僕の手を握ってはしゃいでた。
冷たいと振り解こうとしても、ぎゅっと指を絡めて、君があたたかいのがいけないのだとにんまり笑う。
僕はその笑顔に弱くて、まんまと体温を奪われてしまうのが冬の朝の日常だった。

最期に触れた手も、ひどく冷たくて。
棺の中で微笑む貴女がいつものように手を握ってくれはしないかと、そんな馬鹿な事を思っていた。
人が最初に忘れるのは声だと言う。
ひと月が経ち、ふた月が過ぎ、それでも涙が止まらなかった日々を越え。
貴女を亡くして幾歳月、"あたたかいね"と囁くあの声は、今もまだ鮮明に残っている。

1/12/2025, 7:02:33 AM