彼の目の前では、ひたすら寿司が跳ねている。
と言うのも、ボタンを1度押すと1度寿司が跳ねる。
それだけのゲームを続けているからだ。
他のゲームハードであれば回数をこなすことでトロフィーを得られたものの、残念ながら彼のプレイするハードにはトロフィーシステムが無く、このゲームの持つ唯一の価値すら失われている。
「はァ〜クソゲーとかいうレベルじゃねえコレ!虚無!何も生み出さない虚無!いや本当に虚無かな?この繰り返しは人生を意味しているのでは。もしくはボタンを押すことで得がたまる亜種マニ車みたいな…」
赤い顔でブツブツ呟く彼を、隣の部屋から教授とその弟子がモニターで監視していた。
「教授、これ何の研究なんスか?」
「ああこれ?クソ退屈で面白みの無いゲームをやらせた時、脳の働きがどうなるか見てんの。」
「ふーん。」
さほど興味を示さない弟子を横目に、教授は続ける。
「ちなみに今、彼は壮大なストーリーを考えているみたいだ…ふ、ぷふ…突如世界中に寿司流星群が降り地球がピンチになる中、生魚に耐性のある日本人が活躍すッぷぷぷ…」
「面白がってんじゃねえかアンタ。一般人にあんまり無意味なことさせてんなよ。アレの精神ぶっ壊れるぞ。」
教授は批判を受けたことに反感を覚えたのか、小馬鹿にするような視線で弟子を見る。
「無意味か。僕はね、どうせXでもやって使い潰すニートの無意味な時間を削り取って、研究材料という意味を持たせてあげてるんだ。これは社会貢献だろ?」
「はァ…本人がそれに意味を感じなけりゃ、何やらせようと無意味でしょーよ。本当に性格終わってんな。」
11/8/2023, 11:40:49 AM