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お別れに握った手は生ぬるく温度を伝えた。ずっと夢見ていた美しい右手は、なんと言うことはないただの人間の手だった。けれど、そんな腑抜けた手の温もりが、どうにも愛おしくなってしまった。離したくなかった。終わりたくなかった。愛になれないまま時間の切れた恋に、今も人知れず身をやつしている。

6/4/2025, 2:24:47 PM