お題『ここにある』
(一次創作・いつものやつ! 夏菜子のターン)
LINEで優斗に合宿の集合写真を見たいとお願いしたら、3分とかからず送られてきた。
ぎゅうぎゅうに詰め込まれた人数は6。半分は見覚えのあるお顔で、その3人が同じ画角にいるだけで私はシアワセ。私抜きで三角関係が成立してるなんて……なんておいしいの!
残りの半分の方々は存じ上げないので今度優斗に会ったら聞こう。お顔とお名前が一致したらより妄想が捗りそうだし、関係性が分かればそれはそれで更にシアワセになれる。
それにしても、合宿の夜か……好きな人の当てっことかするのかな。高山一高は男子校だから、他所の学校の女子の話は出る? あ、でも同じ校内に好きな人がいるかもしれないし。
中村くんが優斗のことが好きだと言っていても私は驚かない。でも身を引くかどうかは優斗次第かな。優斗が中村くんを選ぶなら私はおとなしく身を引こう。
塾の宿題は終わったし、BL小説もキリのいいところまで書けたし。
さーて、寝ようか。
あー! 雑魚寝する男6人なんて美味しすぎるよぉー!!
それから3日後。
今日は私と優斗が、中村くんと由香里に夏祭りのときの詫びクリームソーダをご馳走することになっている日。
私と由香里が先に店内で待っていると、体感10分後に優斗たちがやって来た。
「どうしたの、ふたりとも!」
「とても真っ黒なのです」
私と由香里が口々に言えば、優斗は「焼きすぎた」と言ってヘラリと笑った。
「真夏の浜辺を俺ら舐めてたわ。しかも誰も日焼け止め持ってきてなかったし」
中村くんはそう言いながら時折由香里に視線を送る。しかし由香里は気づいていないのか、気づいてスルーしているのか。
私は少し意地悪したくなってしまった。
だって、私の推測が間違っていなければ、多分今中村くんの矢印は優斗に向かっていない。これ即ち、私には面白くない展開。
「中村くん、どうしたの? 心ここにあらずって感じだけど」
すると中村くんは作った笑顔をこちらに向けてくる。
「な、なんでもないです! 俺の心はここにあります!」
それからしばらくの間、クリームソーダを飲みながら先日の合宿の話で私たちは大いに盛り上がった……中村くんを除いて。
やはりソワソワと落ち着かない感じだ。
中村くん、違う! 早くいつものあなたに……優斗を強く求めていたあなたに戻って!!
8/27/2025, 10:51:32 AM