「僕は、弱かったんだ。」
彼はそう泣いたまま、私の前から消えた。
「静かだな…。」
私だけしか居ないリビング。数日前まではここに、おしゃべりな彼の言葉が響いていたのに。今はそんなものはなく、虚空が住み着いている。
彼は映画監督だった。たくさんの作品を、たくさんの人に観てもらう事を、誰よりも望んでいた。しかし、彼は称えられる度に、プレッシャーを抱え続けた。そして、とうとう耐え切れずに自殺した。彼は最後まで、自分を責め続けていた。
「助けられなくて、ごめんね。」
私はいつも、彼の写真に手を合わせた。でもきっと、こんな行動も私のエゴでしかないんだ。少しでも心を軽くしたいだけの、薄っぺらいものなんだ。
【僕は君のお陰で、夢を掴めた。君は僕の太陽で、僕は月だ。月はいつだって、太陽を追いかけ回す存在。それでも、君は僕に振り向いてくれた。ありがとう。
ずっと傍に居れなくて、ごめんね。】
彼からの手紙を見つけた時は、驚いた。そして涙を流した。私は、彼の為に生きれたんだって。彼に愛されていたんだって。只泣いたんだ。
『大丈夫だよ。見守ってるからね。』
そう彼の声が聞こえた気がした。
9/22/2024, 2:08:43 PM