未知亜

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「なんかさ、いつも寒くなってから短くしてるよね」
 君が毛先をもてあそびながら言う。
「乾かすのが面倒だからね」
 欠伸で雑になった語尾にクスクス笑う声が重なる。
「風、冷たいでしょう?」
「冷たいけど」
 軽くなった頭をあたしは声の方へ擦り付ける。温かい手が何度も撫でる。

 冷たい風が吹き抜けるほど、くっつける部分が増える気がするから……なんてことは、やっぱ言わないでおく。


『吹き抜ける風』

11/20/2025, 9:58:41 AM