あぁ、甘ったるい。
酒も、ツマミも、横にいるコイツの言葉も。
元から甘ったるかったのが、札束で更に甘さを増していく。
甘ったるすぎて、死んじゃいそう。
…あ、私はもう簡単には死ねないんだった。
半霊になれた時はラッキーと思ったけど、単純に呪殺で復讐するだけなら、幽霊のままでもよかったかなぁ。…半霊になっちゃった以上は、もう後の祭りだけど。
きっと、私の未練はまだまだ晴れない。この"誰かさんの身体"は、まだまだ借り続けることになりそうかな。まぁ幸い、憑依ではなく半霊化だから、いくら身体を借り続けたところで文句を言う存在はいない。
身体の持ち主さんは、きっととっくに空の上だろうからね。
「今日は本当にありがとう。初めましてなのにあんなに使ってくれたのは、君が初めてだったよ。もしまたウチに帰ってきた時は、また僕を指名してくれたら嬉しいな」
「そうねぇ、その時にあなたが別の人に指名されてないといいけれど」
「大丈夫。その時は、君の方を優先してあげるから」
「あら、そんな贔屓しちゃっていいの?」
「いいのいいの。だって君は、僕のお姫様なんだから」
「そう?ふふ、それは嬉しいわ」
営業スマイルに営業スマイルで返して、私は代金をカルトンに置いた。普段の生活だったらとても払いたくない額だけど…今回は依頼人から経費代わりに受け取った金だから、私の財布にダメージはない。
まさか、札束で殴って強さが決まる世界が、ソシャゲ以外にもあったとはね。おかげで、プライベートの時間も容易に聞き出せた。
後は適当に見計らって、依頼を遂行するだけ…。
猫の時間はおしまい。次は、虎の私と会いましょ。
(「BANDIT」―ベリー―)
11/15/2024, 11:58:54 AM