香草

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「美しい」

周りを見る余裕なんてあるはずない日々でなぜか忘れられない景色がある。
夜中に起こったトラブルのせいで早朝から会社に呼び出されたときのことだ。
喉を掻きむしりたくなるような焦りとぶつけようがない怒りで早足でいつものコンビニを通り過ぎるころ、ちょうど朝日がコンビニの上から顔を出して目背けた。その視線の先に色が抜け切った髪に寝癖をつけて、首に白いタオルを巻いて汚れた作業服を着たおじさんがいたのだ。
ちょうどタバコを吸い終わったのか立ち上がって灰皿に押し付ける。車に戻ろうとしたところで私と同じように朝日に照らされた。
スポットライトが当たった舞台上の俳優のように眩しく照らされているのに、目も背けない。むしろ太陽な挑むかのような目つきで背筋を伸ばした。
その様子がとても忘れられない。
私が怒れるほどの朝から覚悟を決めて一日に挑む。
これが日常、だがやってやんよとでもいうような余裕。
その姿はこれまでに見たどんな景色よりも美しかった。

1/16/2026, 5:14:08 PM