たーくん。

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木製の大きくて懐かしい小学校の下駄箱。
今日は、息子の授業参観だ。
久しぶりに小学校へ来たが、いつ来ても懐かしい気持ちになる。
当時はヤンチャで、よく先生に怒られてたな……。
下駄箱でスリッパに履き替えていると、近くの廊下の壁に大人達が集まって、何かを見ていた。
俺と同じ授業参観に来た人達だろうか?
気になったので、見に行ってみる。
後ろから覗き込むと、"将来の夢"と大きく書かれた文字の下に、複数枚の紙がズラっと貼られていた。
「ふふ、こんなことを書く子がいるのね」
「父親がこんなこと言うなんて、この子の親の顔を見てみたいもんだ」
将来の夢を書いた紙が沢山並んでいるのに、なぜか、皆は一枚の紙に注目している。
その紙に書かれていた将来の夢は……。
"ぼくは、泡になりたい"
力強く、そう書かれていた。
理由は……。
"「ボディソープのような泡になれば、女の人のはだにくっつくことが出来て、幸せの気分になれる。
これが、男にとって最高のよろこびであり、ごほうびなのだ!」と、パパがおさけをのみながら言ってたので、ぼくもそうなりたいと思いました。"
……なんじゃそりゃ。
酔っ払った状態で、子供になんてことを言っているんだ。
とんでもねぇ親だな。
俺もこの子の親の顔を見てみたいもんだ。
これを書いた子供の名前は……田中 直記。
俺の息子じゃねぇか!!!
酒飲んでる時にこんなこと言ってたのか……俺。
女性のボディソープの泡になりたいほど、俺は飢えていたのだろうか?
いや、今はそんなことはどうでもいい。
バレる前に、退却だ!
俺は一歩後ろへ下がり、早足でその場を去って、息子の教室へ向かった。
このあと、教室で息子に「パパ!」と大声で呼ばれて、バレたのは言うまでもない。

8/5/2025, 10:17:43 PM