いろ

Open App

【永遠に】

 永遠なんてないのだと、かつて君は吐き捨てた。社会の在り方も人の心も、簡単に移ろい変わっていく。だから永遠に変わらぬ愛なんて、世界のどこにもないのだと。
 夜の公園で一人きり、ブランコに腰掛けた君の背中をそっと抱きしめた。愛想を振り撒くことに疲れ果てた時、君はいつもこうして真夜中にブランコを揺らす。社交性と交渉能力に優れるくせに、他人を一切信用していない君の孤独を感じるこの瞬間が私にはひどく悲しくて、だけどそれ以上に愛おしく感じられた。
 このときこの瞬間だけは、君は私を拒絶しない。私の声を腕を、ただぼんやりと受容する。君にとっての私がそれなりに『特別』であることの証だった。
「また飽きずに来たんだ」
「うん。面倒だなって思うまではそばにいるって約束したでしょ?」
 冬の風にさらされて冷え切った君の耳へと囁きかける。永遠に隣にいるよ。そう伝えているのと同じことだ。だって私が君を面倒だと思う日なんて、一生訪れるわけがないのだから。
「……ありがとう」
 私の想いを知ってか知らずか、君は柔らかな声でつぶやいて、私の手を自身の手でそっと包み込んだ。

11/2/2023, 3:42:18 AM