「てぶくろ(創作)」
落とし物の片方の手袋に動物たちが「わたしもいれて」「ぼくもいれて」と次々にやってきて手袋の中で暮らす物語…
私の小さな手袋には、どれだけの人が入るだろう。いつも人に対して壁を作って、中に入ろうとしない私は、ずっと独りだと思っている。
楽しそうに話している中に入ることは、もちろんしない。子どもの頃、母子家庭で忙しかった母を煩わせてはいけはいと我慢してきたのが、原因なんだろうか。ただの、嫉妬なんだろうか。私の知らない事をみんなは知っていて、共通の話題で笑い合える姿を見て、羨ましいと思ってるんだろうか。楽しいことがない訳では無いの。
雲がハート型に見える時も、小さな幸せを見つけたように嬉しく感じるし、信号に引っかからず歩ける時もラッキーなんて思える自分もいる。
あ、そうか…
それは、独りの世界だからなんだ。
あのてぶくろのお話の動物たちも、前に入っている動物が幸せそうだから、楽しそうだから、あったかそうだから、入りたいと思ったに違いない。
私の手袋には、誰も「わたしもいれて」なんて言ってこないだろうと確信を持って言える。
この手袋に入っている私が、まずは楽しそうにしなくてはならないのだ。誰かと一緒にいたいと求めないといけないんだ。
かなり私にとって難関ではあるけれど、できることからやってみよう。
白い息を吐きながら、ムートンの手袋をはめて、自分の頬をおさえた。
12/28/2024, 3:52:33 AM