「これ、落としたよ。」
背後から突然男性の声が聞こえ、瞬時に振りかえる。
真夏の昼下がり。眩しさのあまり、手のひらで視界を遮る。
「あ、すみません。助かりました。」
まともに顔が見れない申し訳なさを感じながら、差し出された定期入れを空いている方の手で受け取る。
それでは、と頭を下げてまたもとの方向へ歩き出した。
あれ、そういえば聞き覚えのある声だったような。
ふと、立ち止まり振り返るが彼はもういない。
その声は、5年前に亡くなったおじいちゃんの声に似ていた。
1/24/2023, 10:23:07 AM